前回の投稿でもお伝えした、この水曜日に製作をスタートされたお客様。
金曜日までの遅めの夏休みを利用して一気に進めるご予定です。
ちなみにこの方、世田谷の用賀にあるLORO SETAGAYA のスタッフさん。
小径車と折りたたみ車がご専門の自転車屋さんでらっしゃいます。
しかし表題の通り、作られる車両はMTB。
しかもかなり男前仕様のトレイルバイク。 でも、、、お乗りになるのは奥様。
旦那さん、カッコ良すぎます!
では三日間の製作の流れを見ていきましょう〜
(ちょっと長いですがおつきあいください)
まず初日、通常通りジオメトリーとフレームの仕様のご相談から。
何度かご相談に足を運んで頂いたおかげでそこはすんなりと終了。
早速製作に入ります。
普段ですとまず メインチューブのマイタリングから行うのですが、
この方、奥様のための車両ということで、ヘッドチューブにもリングで装飾を入れられることに。
そんなわけで、まずヘッドチューブに巻くリングを一本のパイプから切り出していきます。
上のリングには奥様のお名前とLOVEの文字を模様のようにあしらい、下のリングには寄り添う二つのハート。
細いドリルで輪郭に穴をあけて、写真のような細いヤスリで細かく仕上げていきます。
とっても細かいお仕事。ここまでで一日が過ぎました。
二日目、奥様とお約束されていた加工から。
シートスリーブに奥様のお名前を入れられます。
ヘッドリングよりも格段に細かい”愛”の文字。
横で見ていた僕たちも最初は正直、 諦めるかな? と思っていたのですが、
奥様への強い想いの賜物か見事完成!
オーディエンスからは盛大な拍手が送られました。
完成したリングとスリーブ。
ホントにお疲れさまでした。 すばらしいものを見せて頂きました。
感謝です!
この加工とメインチューブの半分のマイタリングで2日目も終了。
3日目からは5本のチューブと、これらの血と汗の結晶を一つの前三角にしていきます。
3日目 バラバラだった素材を、実際にフレームの形にしていきます。
まずはヘッドチューブにリングをロウ付け。
小さい穴やポケットがロウで埋まらないよう慎重に。。
酸化防止剤のフラックスを塗り、バーナーで温めてリングとヘッドチューブの間にロウをさしていきます。
無事完了!
穴が埋まることも、ロウが溢れることも無く見事な出来映え。 お上手です。
写真がありませんが、フラックスを落とした後ある程度に仕上げします。
ヘッドチューブのフラックスが 落ちる間に、BBにシートチューブをタッキングします。
続いて定盤上でBBに対するシートチューブの水平を確認。
その後ヘッドチューブを仕上げジグにセットします。
ジグ上にヘッドチューブとシートチューブを固定し、トップチューブとダウンチューブをあわせ、カタカタ動かなくなるまで突き合わせを追い込んでいきます。
トップチューブがシートチューブに接合される箇所を確認して、昨日製作した入魂のシートスリーブをシートチューブにロウ付けします。
ヘッドリングの時と同様、ロウが溢れては半日の努力が水の泡。
ロウをさし過ぎて小さいポケットを埋めてしまわないよう慎重に。。
と、こちらも無事完了!
フラックスを落とし、焦げもヤスリで落としてトップの写真ような状態に。
これを見て驚かない人はいないのでは?
ホントにすごい! びっくりです。
そして再度ジグにセットし、タッキング前の最後の確認。
写真はフレームサイズとなるトップチューブの取り付け位置の確認。
水抜き穴をあけるのも忘れずに。
そして前三角の仮止め、タッキングです。
BYOBにて使用しているSunrise cyclesオリジナルジグは360°旋回可能。
ロウ付け箇所に合わせてジグをまわして、フレームの中心線に沿ってちょっとずつロウで止めます。
写真を撮り逃しましたが、本溶接の前に定盤上でフレームのアライメントを確認して、いざ本溶接!
時計は10時を回って終了の時間でしたが、三日間でここまで進める! と決めてらっしゃったお客様。
その意気込みに惚れ、僕たちも喜んで残業させてもらいました。
溶接箇所と順番を確認し、ピンポイントの火でロウ付けしていきます。
途中手こずる箇所もありましたが無事完了!
小物の取り付け、スリーブ、リングのロウ付け とちょっとずつ火を使ってきて、
この頃には火の扱いも手慣れたものでした。
(時間も時間でしたのでw、) 溶接後、その集中力と何より奥様への想いを讃えて乾杯!
三日間本当にお疲れさまでした!
ともに過ごした僕たちにとってもとても有意義な時間でした。 ありがとうございました。
このフレームより詳しい制作風景はこちらからどうぞ。
実は、、、
小売り、問屋を問わず、自転車業界の方でフレームをお作りになるのはこちらの方が初めてです。
専門の車種は何であれ、数字や各部の仕様を理解し、そのフレーム一本の意味を自分なりに解釈する。
またそれらを分類し発信する。
ブランド名の暗記だけではない、そんな自転車に携わる人間にとって一番大切なことが、
一本のフレームを作ることから見えてくる。と僕たちは思っています。
たとえ作った車種が何であれ、この方は ここでのご経験を ご自身のショップでのお仕事に活かしてくれるはずです。
「私がコレをお勧めするのはこういう理由で、、、」
説明臭く聞こえる時もあるのでしょうが、その言葉には躍動感があると思います。
「フレームを作ったことがある店員のいる店」
今の日本で それはすごいことだと思います。
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